【国・チーム概要】
人口:約4600万人 国土面積:約437,000平方キロメートル 首都:バグダード 公用語:アラビア語
イラクは、古代メソポタミア文明が栄えた「文明のゆりかご」として知られ、チグリス・ユーフラテス川の恵みを受けた肥沃な平原と、広大な砂漠、険しい山岳地帯という多様な顔を持っています
中東(西アジア)に位置する内陸寄りの国ですが、南東部でわずかにペルシャ湾(アラビア湾)に面しています
北: トルコ 東: イラン 西: シリア、ヨルダン 南: サウジアラビア、クウェート と接しています
海岸線は約58kmと非常に短く、ペルシャ湾の最深部に位置しています
国土は大きく4つの地域に分けられます
メソポタミア平原(中央・南部)は、 チグリス川とユーフラテス川に挟まれた低地で、イラクの心臓部で、古くから農業が盛んで、首都バグダッドもこのエリアにあります
砂漠地帯(西部・南部)は、国土の約40%以上を占め、シリア砂漠やアラビア砂漠へと続く広大な乾燥地帯です
山岳地帯(北部・北東部)となるイランやトルコとの国境付近にはザグロス山脈が走り、標高3,000mを超える険しい山々が連なり、冬には積雪も見られます
両河の合流地点付近には広大な湿地(マーズ・アラブ)が広がり、独特の生態系と文化を形作っています
大部分の地域は、砂漠気候で、夏(5月〜10月)は極めて暑く、日中の気温が50°Cを超えることも珍しくありません
冬は比較的冷え込み、昼夜の寒暖差が激しいのが特徴です
イラクはその立地から、古来より東西の交通の要所として重要な役割を果たしてきました
現在は世界有数の原油埋蔵量を誇る資源国としての側面も持っています
国土の面積は約43.8万平方キロメートルで、日本の約1.16倍です
イラクにおいてサッカーは「国民的スポーツ」です
身体能力が高く、非常にパワフルで粘り強い戦い方をするのが特徴です
代表チームの愛称は、「メソポタミアのライオン(Usood al-Rafidayn)」と呼ばれ、アジア屈指の強豪として知られています
2007年開催のアジアカップでは、激しい内戦状態にあった時期、多民族・多宗教の選手たちが団結して優勝を飾り、世界中に感動を与えました
40年ぶり2回目となるワールドカップ本大会への出場を決めており、現在非常に盛り上がっています
ワールドカップへは10大会ぶり2回目の出場となります
FIFAランキング:58位(2025/11/19付)

【アジア予選】
アジア予選では、グループBに属し3位となり、アジア4次予選、大陸間最終予選を経て、本大会出場権を獲得しました
| 3次予選順位 | チーム | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 勝点 |
| 1 | 韓国 | 6 | 4 | 0 | 20 | 7 | 22 |
| 2 | ヨルダン | 4 | 4 | 2 | 16 | 8 | 16 |
| 3 | イラク | 4 | 3 | 3 | 9 | 9 | 15 |
| 4 | オマーン | 3 | 2 | 5 | 9 | 14 | 11 |
| 5 | パレスチナ | 2 | 4 | 4 | 10 | 13 | 10 |
| 6 | クウェート | 0 | 5 | 5 | 7 | 20 | 5 |
| 3次予選対戦成績 | KOR | JOD | IRQ | OMN | PSE | KWT |
| 韓国 | - | 2-0 1-1 | 3-2 2-0 | 3-1 1-1 | 0-0 1-1 | 3-1 4-0 |
| ヨルダン | 0-2 1-1 | - | 0-0 0-1 | 4-0 3-0 | 3-1 3-1 | 1-1 1-1 |
| イラク | 2-3 0-2 | 0-0 1-0 | - | 1-0 1-0 | 1-0 1-2 | 0-0 2-2 |
| オマーン | 1-3 1-1 | 0-4 0-3 | 0-1 0-1 | - | 1-0 1-1 | 4-0 1-0 |
| パレスチナ | 0-0 1-1 | 1-3 1-3 | 0-1 2-1 | 0-1 1-1 | - | 2-2 2-0 |
| クウェート | 1-3 0-4 | 1-1 1-1 | 0-0 2-2 | 0-4 0-1 | 2-2 0-2 | - |
| 4次予選順位 | チーム | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 勝点 |
| 1 | サウジアラビア | 1 | 1 | 0 | 3 | 2 | 4 |
| 2 | イラク | 1 | 1 | 0 | 1 | 0 | 4 |
| 3 | インドネシア | 0 | 0 | 2 | 2 | 4 | 0 |
| 4次予選対戦成績 | SAU | IRQ | IDN |
| サウジアラビア | - | 0-0 | 3-2 |
| イラク | 0-0 | - | 1-0 |
| インドネシア | 2-3 | 0-1 | - |
【大陸間最終予選 パス2】
2026年3月31日 イラク 2-1 ボリビア
【主力選手】
イラク代表は、欧州組と国内・中東組が融合した非常に強力なチームです
ヘスス・カサス監督(スペイン出身)の下、従来のパワフルなスタイルにスペイン流の規律と戦術が加わり、非常に手強いチームに仕上がっています
アイメン・フセイン Aymen Hussein (イラク:アル・カルマ) FW 1996/3/22生 189/82
イラクの絶対的エースストライカー 高さを生かした空中戦の強さはアジア屈指
ジダン・イクバル Zidane Iqbal (オランダ:ユトレヒト) MF 2003/4/27生 181/70
マンチェスター・ユナイテッドのユース出身 高いテクニックを持つ攻撃の司令塔
アリ・ジャシム Ali Jasim (バーレーン:アル・ナジマ) FW 2004/1/20生 178/74
アジアカップや五輪予選でも大活躍した、イラクサッカー界の至宝と呼ばれる若きアタッカー
アミール・アル・アマリ Amir Al-Ammari (ポーランド:クラコヴィア) MF 1997/7/27生 184/78
攻守の要となるボランチ 左足のキック精度が非常に高く、精度の高いロングパスで展開をガラリと変える
イブラヒム・バイェッシュ Ibrahim Bayesh (UAE:アル・ダフラ) MF 2000/5/1生 180/72
献身的な走りと多様性を兼ね備えた、ハードワーカー 右サイドバックからウイングまでこなすポリバレント
【チーム特徴・注目度・展望】
サッカー男子イラク代表は、1986年大会に初出場した際は3戦全敗(1得点4失点)だったため、まずはワールドカップでの初勝利が最大の目標です
グループIで対戦するフランス、セネガル、ノルウェーはいずれも強豪ですが、拡大された今大会では各組3位でも進出の可能性があるため、史上初のグループステージ突破を真剣に狙っています
プレーオフでも見せたように、崖っぷちの状況から勝ち上がる勝負強さがあり、長年の戦乱を乗り越えてきた背景もあり、国民の期待を背負って戦う際の団結力と士気の高さは出場国の中でも随一です
ヘスス・カサス前監督が植え付けたスペイン流のパスサッカーと、伝統的なフィジカルを前面に出したスタイルが融合し、現在のグラハム・アーノルド監督の下、より「縦に速いトランジション(切り替え)」を重視した実利的なスタイルになっています
エースのアイメン・フセインを中心とした高さのある攻撃は、欧州や南米のチームに対しても十分に通用する武器です
アジア予選でも、格下相手に一瞬の隙を突かれて失点する場面が見られました
特に世界トップクラスのアタッカーを擁するフランスなどの強豪に対し、90分間集中を維持できるかが最大の懸念点です
主力であるジダン・イクバルやユセフ・アミンなど、欧州でプレーするテクニシャンたちに怪我がちという不安要素があり、控え選手との実力差が大きく、主力が欠けた際に戦術の質が著しく低下するリスクがあります
イラクは今回の予選で世界最多の21試合を戦い抜きました
ボリビアとの最終決戦もメキシコで行われたため、選手たちの蓄積疲労は相当なもので、本大会までにどこまでコンディションを回復させられるかが鍵となります
【備考】
イラクは、日本サッカー界で語り継がれる「ドーハの悲劇(1993年)」の対戦相手として非常に強い印象を残す国です当時の日本代表(ハンス・オフト監督)は、三浦知良、ラモス瑠偉、中山雅史らを擁し、悲願のW杯初出場に王手をかけていました
最終戦のイラク戦に勝利すれば、他会場の結果に関係なくW杯出場が決まるという極めて有利な状況でした
日本はカズ(三浦知良)とゴン(中山雅史)のゴールで2-1とリード。試合は後半ロスタイム(アディショナルタイム)に入り、誰もが日本の勝利とW杯初出場を確信していました
時計の針が後半45分を過ぎたその時、悪夢が起こります
イラクが右コーナーキックをショートパスで繋ぎ、クロスを上げ、これを交代出場のオムラム・サルマン選手がヘディングで合わせ、ボールは放物線を描いて日本ゴールの右上隅に吸い込まれました
スコアは2-2となり、その直後に試合終了のホイッスルが鳴り響きました
同時刻に行われていた他試合でサウジアラビアと韓国が勝利したため、日本は得失点差で韓国に及ばず、グループ3位に転落し、土壇場で本大会への切符を失いました
この出来事は、日本中に凄まじいショックを与えましたが、同時に日本サッカーが飛躍するきっかけにもなりました
この時ピッチにいた柱谷哲二や井原正巳、そして当時ベンチにいた森保一(現・日本代表監督)らは、この悔しさを糧にその後の日本サッカーを支えました
この4年後、1997年のフランスW杯予選で日本はついに初出場を決めますが、その劇的な勝利は「ドーハの悲劇」と比較して「ジョホールバルの歓喜」と呼ばれました
30年後の2022年カタールW杯では、同じドーハの地で、森保監督率いる日本がドイツやスペインを破る快進撃を見せ、「悲劇の地」は「歓喜の地」へと上書きされました